まだまだ世間一般には、自閉症という障害に対しての認知が広まっていないのが現状です。
よって自閉症児に対する世間の目は厳しく、その家族は家の外では、廻りの人たちに迷惑をかけないよう子供をみていなければならず、「ストレスがたまる生活」を強いられていることが多いのです。
親はつねに、家に帰った時くらいは、落ち着いた生活を送りたいと考えています。
特に玄関からの「無断外出」は、最も避けなければならない最重要課題です。なぜなら、交通事故にあう危険性が増し、捜索願いにまで発展する可能性があるからです。
私は自閉症児(中度)の息子を持つ親であり、工務店を営む一級建築士でもあります。
賃貸住宅暮らしを経て一戸建て住宅を設計・施工し、今はその家で暮らしています。
「自閉症児と暮らす住まいの安全対策を盛り込んだ家」としましたので実例を見ていただきながら、アイデアを参考にしていただければと思います。
この記事では、子供の無断外出予防に役立つ玄関扉の対策について解説します。
この記事を読むと、ご自宅の玄関扉の対策方法や工事会社に伝える内容を理解できます。
ここでいう対策とは、玄関扉に「両面シリンダー錠」や「脱着サムターン」を追加することです。この対策をすれば、自閉症児が勝手に外へ出る危険性が下がり、安心できる住まい環境が整います。
両面シリンダーとは
通常の玄関扉は外側にカギ穴にカギを挿して解錠するシリンダーと内側につまみを回して施錠するサムターンがついていますが、両面シリンダーは内側も外側と同様にカギで施錠するタイプのことをいいます。
脱着サムターンとは
通常の玄関扉は内側にサムターンというつまみがついていますが、このつまみを取り外すことができるのが脱着サムターンです。
つまみ(サムターン)をはずしておけば、勝手に外へ出られません。本来は「サムターン回し」を防ぐための防犯設備です。
サムターン錠だけでは、すぐ外に出ていける状態です。もし外に自分の興味のあるものを発見したら、自分で錠を開けて出て行ってしまうでしょう・・・。
玄関扉のカギを追加することで、不安のない落ち着いた生活を送ることができます。
「外に出たい」という意思表示を親に促す「きっかけ」になるのではないでしょうか。
両面シリンダー錠を追加する
内側もカギ穴とすることで、カギを持っている人でないと、外へ出られなくなりますので、勝手に外に出て欲しくない人がいる場合は、安心して暮らすことができるようになります。
工事は通常、建具工事店がされます。ドアに穴を開け両面シリンダー錠を追加します。
ここで注意して欲しいことは、今お使いのカギで開けるためには、シリンダーを現在お使いのガギメーカーのナンバーに合わせることです。そうしないと、ひとつガギが追加され、2種類持ち歩かなくてはならなくなります。
工事自体は通常半日で終わりますが、ナンバー合わせのシリンダーの準備に少なくとも1ヶ月程度はかかると思われます。
脱着サムターン付きの玄関扉に変更する
サムターンを取り外すことができるため、サムターンを持っている人しか外へ出られません。
ただし、汎用部品がないため、玄関扉ごと取替えなければならず、高額な出費となります。
玄関扉をリフォーム予定で、最近流行りのスマートキーに変更したい方にはお薦めです。
注意点ですが、脱着サムターンは1個しか付属せず、家族で共用したい場合は不便となります。
玄関扉リフォームですが、まず現状の玄関扉を採寸して工場製作期間を経ての工事となります。
工事自体は通常1日で終わりますが、採寸から工事まで少なくとも1ヶ月程度はみていただく必要があります。
まとめ
玄関扉のカギを変更することで、不安のない落ち着いた生活を送ることができます。
費用を抑えたい方は両面シリンダーの追加でよいと思います。
参考資料として「子どもといっしょに育てる住まい」横浜市総合リハビリテーションセンター発行が
知的・発達障害のある子どもの住まいについて、とても分かりやすくまとめてありますのでご一読をお薦めします。